職人の想い

慎重に扱うことと大切にすることは、 同じではないと思っています。

毎日使うランドセル。時には友だちとふざけあったり、お部屋にポンと置きっぱなしすることもあるかもしれません。壊れ物をさわるような扱いより、信頼して安心して、長く使っていただきたいと願っています。

そのために、革と同じようにこなれていく丈夫な麻糸を使う、ほつれにくいよう二本の針で8の字を描くように交差させて縫いつけるなど、強度と美しさを追求した「手づくり」にこだわっています。

身につける道具だからこそ、 子どもたちにやさしい金具を選びます。

スポーツ選手がアクセサリーを身につけて試合をしているのと同じで、計算しつくりあげられた金属は、決して持ち主を傷つけることはありません。動きの激しい子どもたちが身につけるランドセルの金具も、その動きやすさ、扱いやすさ、そして何より安全に配慮した「子どもたちにやさしい金具」を使用しています。

ひとつひとつ手づくり、修行を積んだ職人が生みの親です。

さみしいことですが、ランドセルを一人で、一から作り上げられる職人が減っています。分業化が進む現在、厳しい修行を続けて「技」を身につける人が少なくなっているのです。こうした中で「本物の手づくり」にこだわる黒川鞄工房には、数々の受賞歴を持つ、日本でも名工の誉れ高いランドセル職人がいます。黒川鞄工房ランドセルの生みの親です。「ランドセルは我が子同然」と語る職人の手づくりだからこそ、頑強で美しく、そして存在感のあるランドセルをお届けすることができるのです。


職人PickUp

職人PickUp

5代目オーナー黒川由朗が語る革鞄への想い、プロデューサーという仕事。

すばらしい素材との出逢いを最大限に活かし、生活シーンに映える美しいフォルムに仕上げる。鞄づくりは素材と技術のコラボレーション。



クリエイティブ・ディレクター 黒川 由朗

鞄の世界のクリエイティブ・ディレクターという仕事は、これまでにない特殊なポジションと言えます。革の選定からデザイン、工程、販売まで鞄に関わる全てに対して管理監督し、時には実際に製作も行うという総合的な視野に立った鞄職人です。ですから、革や鞄に対する想いも人一倍強いと自負しています。わたくしの場合、まず素材からひらめき、その素材に応じて構想を練ります。天然素材の鞄には命が宿っています。

馬や牛は人間と共に暮らし、人の命を支える食となり、残った革が鞄などレザー製品へと生まれ変わります。天然素材に敬意を払い、道具を知り尽くし、素材と会話し、職人と会話しながら作り上げて行く、それが私の仕事だと思っています。

「美しいこと、馴染むこと、使いやすいこと。それがランドセルに対する美意識」

一生に一度しかない「初めて背負った日」を、忘れられない最良の一日にしてあげたい。職人が語るランドセルに対する想い、姿勢、道具たち。



ランドセル一筋五十年以上 樋口 清三

「ランドセルの職人にとって、大切なのは素直で正直なこと」そう語るのは、匠・日本シリーズを手がける、ランドセル一筋五十年以上の樋口さん。手作りのランドセルは、職人ひとりひとりの技はもちろん、作った人間の個性が出るという。「例えば、このベルトの穴。この穴を開ける位置ひとつでも作った人間によって違うんだね。それが使いやすさや美しさの違いになっていくんだよ」これは理屈ではなく、経験によって培われたものだ。

二十歳の頃からランドセル工場で修行を重ね、通産大臣賞、日本商工会議所会頭賞など数々の賞を受賞。やがて後輩の指導を経て、現在は工房を拠点に黙々とランドセルをつくり続ける。ランドセルを初めて組み上げたのは二十代の頃。現在の完成度を尋ねると「生涯修行だと思っているから、まだまだ80点くらい」と照れながら答えてくれた。ベテランの職人が見ても「完成された作品」といわれるランドセルに対して、樋口さんの目は何倍も厳しい。

「娘が子どもの頃は、試作品を背負わせて他の子どもたちの話や使い心地を聞いて廻った」というエピソードが物語るように、常に工夫を重ねている。そしてそのために無くてはならないのが、自分と共に歩んだミシンや革包丁だ。古いものでは四十年以上使っている、というミシンにも独自の改良を加えて使い続ける。こうした道具の中には、現在では殆ど手に入らない物もある。「新しいものと古いもの、それぞれ良いところがあるから、両方手放せない」と革包丁を手にとって語る。

最後に、ランドセルづくりで最も大切にしていることを聞くと「美しい姿であること」と答えた。華奢なきれいさではなく、力強く凛としたランドセルらしい美しさ。入学式を迎える子どもたちが誇らしげに通う姿を想像しながら、妻と二人三脚で今日もランドセルを作っている。