黒川鞄店

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工房の本棚

「君の食するところを言いたまえ。君がどんな人物かを言い当てよう」 19世紀フランスの美食家ブリア・サバランの言葉は有名です。
経営者として、また鞄制作を熟知する職人として、それぞれ必要に迫られてページをめくる書籍をご案内するのは、いささか気恥ずかしい気持ちもあります。ここではそのなかから抜粋した本をご紹介します。

カテゴリー別アーカイブ: [経営]

「売れる営業」のカバンの中身が見たい!―“新規開拓の神様”が明かす必勝ツール34 [単行本]

著者名: 吉見 範一   出版社: 大和出版

内容紹介
類似品の対比図―難解な説明がいっさい必要なくなる。切り抜いたパンフレットの束―「売れる営業トーク」の最強サポート役。新聞の折り込みチラシ―「第三者の言葉」でお客さまの信頼を獲得。タイピン―お客さまとの思い出が最強のツールに。ユーザー写真集―圧倒的なリアリティで新規開拓の切り札に。自社&競合の広告―不利な状況なのに契約数が4倍にアップ。商品の型紙―「小さな決断」を促すことで自動的に契約になる。失敗例のサンプル―「売ったら終わり」の営業マンと思われない。―などなど、お客さまのココロをギュッとつかむアイテムの数々を営業シーンごとに徹底解説。

著者について

職人の感想
 トップセールスマンの必殺営業ツールを紹介し、それを収納するのに最適なカバンを提案する。類似品の対比図、パンフレットの束をどのように生かすのか、チラシなどのあっとおどろく活用術などを具体的でわかりやする解説する書籍だ。
 敏腕営業マンがすすめる良いカバンとは、以下の3条件が必要だと力説する。結果として、よくあるアタッシュケースはもっとも不向きであると語る。まずは営業活動に使用するツールをカバンから、かっこよく取り出せること。つぎに、カバンそのものが自立していること。さらに、メインのファスナーが二つあることが重要だと説く。お客さまにお見せする営業ツールとは別に契約書や極秘書類などは別の収納場所に納めないといけない。
 営業の実践書としてわかりやすい1冊だ。

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伝統の逆襲―日本の技が世界ブランドになる日 [単行本]

著者名: 奥山 清行   出版社: 祥伝社

内容紹介
世界をきわめたデザイナーが実践する「職人技の復権」と「ブランド戦略」のすべて。

著者について
奥山 清行 工業デザイナー。世界的に著名なカーデザイナーとして、欧米では「ケン・オクヤマ」の愛称で知られる。1959年、山形県山形市生まれ。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。米国アートセンター・カレッジ・オブ・デザインを卒業後、ゼネラルモーターズ(米)、ポルシェ(独)のチーフデザイナー、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインの工業デザイン学部長を経て、名門ピニンファリーナ(伊)のデザイン・ディレクターに就任。エンツォ・フェラーリ、マセラッティ・クアトロポルテなどのカーデザインを担当した。2006年9月に独立し、現在Ken Okuyama Design代表。自動車を含む各種工業デザインの他、日本の地場産業再生を目指し、KEN OKUYAMAレーベルにてメガネを、地元の「山形工房」では木工家具や鋳物の製造販売を行なっている。グッドデザイン賞選考副委員長、アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン工業デザイン学部客員教授(米)、中央美術学院客員教授(中)、多摩美術大学客員教授、金沢美術工芸大学客員教授、名古屋芸術大学特別客員教授、「山形カロッツェリア研究会」主宰、「山形工房」代表を務める。
職人の感想
 工業デザイナーとして著名な作者が、米国、欧州や日本での体験を基にした「職人技の復権」と「ブランド戦略」を熱く語る。日本はものづくりで世界ブランドになる日を夢見る。器用、工夫、改良という日本職人のもつ突出した能力をいかす重要性を説く。米国、ドイツ、イタリアの自動車産業がもつそれぞれの特性を知り尽くした著者が、「想像力」と「自己犠牲」という日本の特性に注目する。
 フェラーリに代表されるイタリア流のものづくりの概念と日本にある伝統の匠の技を融合し、日本の伝統的なものづくりをさらに高めた「カロッツェリアの時代」を宣言する。
 アメリカは圧倒的な大量生産の国であり現場ではミリがわからない。ドイツ職人は案外不器用であり、イタリア人はすぐにあきらめる。世界を渡り歩いた人ならではの洞察力だ。
 日本の職人が世界に伍して活躍するには、コミュニケーション能力が欠かせない!との指摘は重要だ。

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堕落する高級ブランド [単行本]

著者名: 実川 元子   出版社: 講談社

内容紹介
誰よりもブランドを愛するファッション・ジャーナリストが描く「高級ブランド」神話の栄光と矛盾。

著者について

職人の感想
 ラグジュアリーブランドの闇の部分に光を当てた話題作。徹底した取材で神話の裏側を暴いた話題の書籍。本当の高級ブランドが生き残る道を提案する。
 品質重視から利益重視の企業グループへの変貌を描く。ブランド企業をめぐる創業家と実業投資グループとの死闘。広告塔となる有名人に自社ブランドを提供するPR合戦の内幕。低品質、工程省略、海外生産の実例をあげ、かつての高品質とは異なる実態を暴く。
 ブランドバッグの製造原価が10~12分の1という驚愕する実態を示す。一部の愛好者を相手にしていた家族経営の小規模会社を、投資家が買い取り、より幅広い階層にむけた商品へと「ブランドの民主化」をすすめる手法は、資本主義の真骨頂だ。その結果、多くの高級ブランドはかつての清廉潔白さを失いうとともにその輝きをなくした。
 伝統や高品質をうたった高級ブランドは、建築や食品偽装と同じ構造問題をかかえている。企業を拡大することで得たメリットと引き換えに、「ブランド価値の水割り」という闇の部分を拡大させた。
 この著者はワシントンポストや名だたるファッション誌を活躍の場とする著名なジャーナリストなだけに真摯な指摘は傾聴に値する。

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一澤信三郎帆布物語 [単行本]

著者名: 菅 聖子   出版社: 朝日新聞出版

内容紹介
「泥沼」「確執」「骨肉の争い」。京の老舗ブランドで何が起きたのか。すべてを失ったかに見えた一澤帆布の経営者・信三郎夫妻が、スタッフらと新ブランドを立ち上げるまでを綿密な取材でまとめたノンフィクション。手間ひまを惜しまず作られる「信三郎帆布」の全てを紹介。

著者について

職人の感想
 創業者の死後に勃発したお家騒動。兄弟の骨肉争いはよくある話です。法廷の場での係争となり、逆転判決というドラマ性が世間の耳目を集めることになった。この本の発刊後にも、争いの続編があり、いまだ棺の蓋が閉じられないことに問題の根深さがある。
 この本は、遺言書をめぐるお家騒動の顛末を書き記している。ただし、信三郎氏側の取材なので、長男サイドの事情は不明である。「敗軍の将、兵を語る」章があれば、バランスが取れただろう。
 後半は、帆布についての著者の熱い思いが伝わる内容となっている。このあたりは紙幅の関係もあるのだろうが、物足りない印象を持った。前半部分だけにしぼり、それをふくらませてドラマ化すれば良かったと思われる。

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エルメス [新書]

著者名: 戸矢 理衣奈   出版社: 新潮社

内容紹介
「ブランドのなかのブランド」と呼ばれるエルメス。圧倒的に高価でありながら異常なまでの人気を得た背景には、高水準の職人技術はもちろん、徹底した同族経営、巧みな広報・商品戦略があった。馬具工房としての創業から百六十余年、「伝統」と「革新」を織り交ぜながら発展を遂げた「最強ブランド」の勝因を、日本との関わりに注目しつつ多角的に分析。日本のブランド・ブームについても考察した、ブランド文化論。

著者について
戸矢 理衣奈 1973(昭和48)年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。独立行政法人経済産業研究所リサーチアソシエート、フェリス女学院大学非常勤講師。
職人の感想
 高価でありながら、それゆえに人気を得ているエルメス。高水準の職人技術、同族経営、巧みな広報とすぐれた商品戦略に裏打ちされている。伝統と革新を織り交ぜながら発展を遂げたブランドのなかのブランドとしてのエルメスについて分析している。
 老舗のプレミアムブランドには、共通した成功要因がある。ひとつはブランドの原点となるアイデンティティの明確さ、もうひとつは、伝統を守りながら絶え間ない革新、つまり時代に応じた商品開発にある。
 ブランドの原点となるアイデンティティの構成要素として三項目をあげている。
 第一に品質、そしてイメージと希少性である。
 エルメスの場合、最高級の原料と職人の伝統工芸という高い品質、フランス文化や馬具という高級なイメージと手作業による希少性があげられる。
 革新性ではエルメスの経営史、デザインと広報という視点から考察している。自動車が勃興するなかで馬具が不振となると、打開策として当時の後進国に輸出を企てる手腕は卓越している。また、新しく勃興した映画産業にも積極的に売り込んでいる。ハリウッド女優グレースケーリーの名をつけたバッグはあまりにも有名だ。
 皮革製品とともに人気のあるスカーフに託された「判じ物」の要素を指摘したのは秀逸だ。顧客の教養をくすぐる仕掛けが施されている。
 エルメスの年間テーマは、継続性を保ちながらも、商品群に物語性と限定製を与えるために購買意欲を刺激する卓越した戦略となっている。「創業は易し、守成は難し」という課題にひとつの答えを出している。時代の変遷とともに進化しているブランドにあらためて驚嘆する。

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エルメスの道 [単行本]

著者名: 竹宮 恵子   出版社: 中央公論新社

内容紹介
初代社長ティエリから5代目ジャン・ルイ・デュマまで、約160年にわたるエルメスの歴史を、流麗なタッチで漫画化。様々な名品・逸品の秘話を、入念な現地取材とエルメス社の全面協力を得て描く。

著者について

職人の感想
 竹宮恵子といえば石ノ森章太郎の弟子であり、萩尾望都らの同世代漫画家と大泉サロン「24年組」のメンバーでもある。「風と木の詩」、「地球へ」などの名作が多くある。馬好きとしても知られる彼女に「社史」を依頼したエルメスの英断に驚嘆する。
 一読するとエルメスの社史とフランスの歴史がわかる内容になっている。エルメスの五代目オーナーは年に数回訪日し、日本の古典からさまざまなヒントを得ているようだ。その中で日本の漫画に興味を持ったようだ。1938年生まれの柔軟な発想にただただ驚く。
 エルメスのロゴマークのある馬車の種類は「デュック」、主人が自ら馬を制御するタイプだ。「エルメスは、最高の品質を用意するが、それを御するのはお客様ご自身」との思いが込められているようだ。

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カレ物語―エルメス・スカーフをとりまく人々 [文庫本]

著者名: 浅野 素女/山本 淑子/横井 由利   出版社: 中央公論新社

内容紹介
世界中の人々を魅了してやまない、エルメスの“カレ(スカーフ)”。一枚一枚のカレには独自の物語が織り込まれており、それ自体がひとつの文学作品である―。デザイナーをはじめ、カレに関わるさまざまな人々のインタビューから、他の追随を許さない、エルメスのカレの秘密を明らかにする。

著者について
浅野 素女
千葉県生まれ。ジャーナリスト、エッセイスト。上智大学外国語学部フランス語学科卒業。テレビ番組制作を経た後、文筆業に。パリ在住。

山本 淑子
東京生まれ。ライター。早稲田大学第一文学部卒業。出版社勤務ののちフリーに。雑誌を中心に書評、音楽コラム、人物インタヴューなどを執筆

横井 由利
長崎県出身。ハーパース・バザー・エグゼクティブ・ファッション・エディター。明治学院大学社会学部卒業。『マリ・クレール』『GQ』などモード誌の編集を手がける。
職人の感想
 馬具商からスタートしたエルメスのバッグは有名だが、同時にスカーフの優美さはため息のつく素晴らしさだ。婦人公論で長期にわたり連載した内容を再構成しただけに中身の濃い内容となっている。
 序にかえての中村紘子さんの章と、結びにかえてのエルメス五代目社長の章が全体に落ち着きを与えている。90センチ四方のスカーフ(カレと呼ぶ)の制作者からはじまり、おおくの愛好家の声は珠玉の構成になって楽しめる。
 日本の浮世絵制作と同様に、多くの専門職人によるいくつかの工程をへてエルメスのスカーフは制作される。それらを統括するのは社長でアート・デュレクターでもある五代目デュマ氏である。
 同氏の座右の銘「決して終わりはない、あるのは、続きだけ」は、老舗経営者ならではの味わいのある言葉だ。黒川鞄はエルメスと同じ明治期に創業した鞄屋として、感慨深いものがある。

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